=> ホーム車生活者の悲惨 > ユーザ車検体験記(あの料金は一体...) 

私の愛車がこの4月に最初の車検の時期をむかえたので、ディーラーに電話をしてどれくらい費用がかかるか聞いてみた。電話にでた担当者は、税金や自賠責等の法定費用を除いて、最低7万円必要であると言った。7万円は高いと思ったので、最近話題になっているユーザ車検に挑戦してみようと思い立った。

さっそく私は本屋に行き、たくさん並んでいるユーザ車検の入門書のうち、写真のたくさん入ったものを一冊購入し、勉強を始めた。

いざ、検査場に乗り込む

4月15日午前10時、多摩車検場に着く。受付で書類の審査を受け、検査のラインを指示される。検査は通り抜けできるドライブスルーの工場のような建物でおこなわれる。多摩の検査場では7つのラインがあり、それぞれオートバイ、小型車、中型車という風に種別毎に割り振られている。

車の行列にならぶと検査員が近付いてきて書類一式を要求し、ヘッドライト、ウインカーの点灯やブレーキの指示を出してきた。指示に従って操作すると検査員が車の外から動作をチェックするのである。ここで番号灯(ナンバープレートを照らす灯)の豆球が切れていると指摘される。

検査ラインでの検査のほとんどは電光掲示版に従って運転手自身が行う。例えばブレーキの検査であれば、指示に従ってタイヤをローラーの上に載せるとローラーが回転を始める。掲示版に『ブレーキ踏む』と表示されたらブレーキを踏む。踏み方が弱いと『もう一度』と表示され、作業をやり直すという具合である。

検査結果は各段階で書類に記入するのだが、機械に差し込むと自動的に記入してくれるようになっている。検査手順は分かりやすいとは言えないが、私はユーザ車検のハウツー本で予習をしていたので、問題無く通過できた。ライン場での検査はあっけなくも20分程で終了した。

検査場の出口の受付所に書類を提出すると「検査はすべて合格なので、番号灯を直してからもう一度来てください。」と言われた。近くのガソリンスタンドで豆球を買って来て交換し、再び検査場に持って行くと検査終了の判を押してくれた。検査場のラインの行列にならんでから約1時間ほどですべてが済んでしまったわけだ。

事務所で、車検証と車検済シールを受け取る。なんとなく学生時代の試験が終った後のうきうきした気分を思い出した。

冷静に検討してみると

今回の車検の経費は以下の通りである。

検査手数料
1500円
申請用紙代
30円
ユーザ車検のノウハウ本代
1200円
番号灯の豆球代
450円
車検場まで往復のガソリン代
約300円
合計
約3480円(税金、自賠責等の法定費用を除く)

7万円かかると言われた車検が3千5百円足らずで済んでしまったことになる。すると、ディーラーの担当者が電話で言っていた7万円とは一体何の価格だったのだろうか。
確かに車を預かって一人の人間が検査場まで行けば工賃が必要なのは分かる。しかし、検査場はディーラーから車で一時間で往復できる場所にあり、書類作成と検査そのものを含めても2時間で作業は終わるであろう。とすると時間あたり3万5千円の工賃を取って作業しているということになる。私にはとてもそんな高度技術を必要とする作業には思えないのだが...。

代行屋が大はやり

これに目をつけたのか、最近ユーザ車検の代行屋がおおはやりである。ディーラーが高額な料金を要求するので、それよりもかなり安い料金で請け負っても十分にもうかる商売なのだ。

実を言うと、今回の車検の時期を最初に教えてくれたのは、駐車場の車のフロントガラスのところにひっきりなしに置かれていた代行屋のチラシだった。それらのチラシによると、大体一回あたり2万から3万で請け負うところが多いようだ。その内訳は例によってよく分からなかったし、実を言うと自分で車検を終えた今でもよく分からない。

例えば洗浄代という項目があるが、これは何をするのかというと、車検の下回りのチェック(床下から車の底をチェックする)の時、汚いと検査官の心証を悪くする可能性があるので、あらかじめ洗浄しておくということである。確かにあんまりどろだらけの車を検査場に持ち込むのも考えものだが、代行料金に始めから組み込まれるようなものとも思えない。また、その程度のことに当り前のように5千円という料金がつけられているというのも人を食った話だ。他にも調整代とか、よくわからない項目が並んでいる。車検という実は単純なイベントにいろんなものがくっついて結局高コストになってしまっているのである。

そう言えば車検場のそばに1万円で代行という看板がでていた。車検場との往復の手間がかからないから安いということらしいが、なるほど代行料2万円の内訳は、車検場との往復が1万円、検査作業が1万円であったのか思った。何とも大味な話だ。

書類作成、一枚5千円…!?

ところで受け取った車検証の住所は古い住所のままだったので、ついでに住所変更もしておこうと思い、再び窓口へ向かった。そこでまた世間の暗黒面を見る事になってしまった。

窓口で住所変更をしたい旨を伝えると車庫証明と住民票が必要であると言われた。そこで多摩警察署まで行って車庫証明をとりたいと言うと手数料が2千円必要だと言う。住所変更ごときで2千円取られるのは痛かったが、仕方がないと考え直して、こんどは駐車場を契約した不動産屋に電話し、車庫証明のための書類を書いてもらえないかと相談したところ、手数料5千円なりと言われてびっくり仰天してしまった。
10分もあれば書けそうな書類である。時給換算で3万円も取るような高度技術を要する作業とはとても思えない。結局住所変更は断念した。

その夜、この体験話を電話で友人にしたところ、そんなのは大したことないと言われてしまった。医師をしている彼のお兄さんの話によると、農地の上に病院を建てることになり、そのために必要な書類をしかるべき人につくってもらったところ、手数料として百万円請求されたというのである。規制で守られている医者ですら、こんな目にあっていることに驚きを禁じ得なかった。

ぼったくる側は相手のフトコロ具合と足元を見て、訴訟を起こされるかどうかのぎりぎりのところまで金銭を要求するのである。要求された側は黙ってその額を支払うしかない。私の車庫証明にしたところで、その不動産屋以外には決して書けないのだから...。

規制でがんじがらめのわが国の現状を思い知らされた一日であった。個々の規制の必要性は分かる。しかし役所が一つ規制を作ると、いや一つ提出書類を求めるだけで、ごろつきのような連中がどっと群がってきて、考えられないような高額料金をぼったくるのである。このような国に未来があるとは到底思えず、暗澹たる気持になってしまった。[96/4/20]

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