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その日、一つのオペレーティングシステムが誕生した。そのニュースは一夜にして世界中に知れ渡った。

オペレーティングシステムの名前はLin※x。一部には、「Lin※x はオペレーティングシステムではなく、カーネルに過ぎない」と言う者もいたが、ほとんど相手にされることはなかった。なぜなら一人の聰明な人物が、理路整然としたやり方で、Lin※x が単なるカーネルではなく、紛れもなく完成されたオペレーティングシステムであることを証明したからである。

1. 奇妙な作業

その日、一人の男がきちんとした黒いスーツに身をつつみ、威厳と暖かみを合わせ持ったよく通る声で群衆に語りかけていた。

「皆さん、今日私は驚くべき発表を致します。皆さんはこれから私がすることを注意深く見守っていただきたい。そうすることで、皆さんは歴史の目撃者になります。よろしいですね?」

彼はそう告げると、台の上にLin※x を置き、台の横にGN※ システムを置いた。
(GN※ システムについては、それが何であるかは告げなかった)
そして次のように語りはじめた。

(男)「さて、ここにLin※x があります。Lin※xが何であるかについては今は問わないでおきましょう。重要なことは Lin※x が存在しているということです。いかがですか?『Lin※x は存在する』。このことに異議のある方はいらっしゃいますか?」

(群衆)「異議はありません。Lin※x は存在します。」

(男)「よろしい、では。」

と言うと、彼はおもむろに台の横のGN※ システム からGCC(GN※ コンパイラコレクション) を取り出して群衆の前に掲げ、こう問いかけた。

(男)「これはオペレーティングシステムですか?」

(群衆)「いいえ、違います。それはコンパイラです。オペレーティングシステムではありません。」

(男)「よろしい、では。」

と言うと、彼はGCCをLin※x に加えた。

次に彼はGN※ システムからGLIBC(GN※ C ライブラリ)を取り出して群衆の前に掲げ、再びこう問いかけた。

(男)「これはオペレーティングシステムですか?」

(群衆)「いいえ、違います。それはライブラリです。オペレーティングシステムではありません。」

(男)「よろしい、では。」

と言うと、彼はGLIBCをLin※x に加えた。

彼は同様にして、GN※ システムからデバッガ、リンカ、エディタ、アーカイバ、各種言語、各種ライブラリ、各種サーバ、セキュリティツール、ブートローダー、デスクトップ、シェル、ファイルツール、ネットワークツール、テキストツールなど、ありとあらゆるものを取り出しては、一つずつそれがオペレーティングシステムであるかどうかを群衆に尋ね、オペレーティングシステム ではないとの確認を取ったのちにLin※x に追加していった。

さて、このような作業を繰り返した結果、GN※ システムの中身はすっかりLin※x に移された。後にはGN※ Hurd だけが、がらくたのように残されていた。

2. オペレーティングシステム誕生

「さて、皆さん。」

あたりが夕暮れに包まれようとしていた頃、男は今までとは明らかに違う、大きなはっきりとした声で次のように問いかけた。

(男)「我々がいままでしてきたことを振り返ってみましょう。我々はLin※x に様々なものを付け加えた。しかし、我々はLin※x にオペレーティングシステム を付け加えることはなかった。それでよろしいですか?」

(群衆)「おっしゃる通りです。あなたはオペレーティングシステムは追加しませんでした。」

(男)「ではここでLin※x を見てみましょう。完備されたシステム、これはまさしくオペレーティングシステムではありませんか?」

群衆の中にざわめきが起こった。

男は、騒ぎ始めた群衆をなだめて、次のように駄目を押した。

(男)「我々はLin※x に様々なものをつけ加えはしたが、決してオペレーティングシステムをつけ加えることはなかった。にも関わらず、ここにあるものは紛れもなく完成されたオペレーティングシステムである。ということは、Lin※x はオペレーティングシステムであると言ってよいのではないでしょうか?」

「おっしゃる通りです。Lin※x はオペレーティングシステム です!」

一人の男がそう叫ぶと、その声は瞬く間に群衆の間に広がっていき、次第に巨大なシュプレヒコールへと形を変えていった。

(群衆)「Lin※x オペレーティングシステム!Lin※x オペレーティングシステム!Lin※x オペレーティングシステム!」

シュプレヒコールはいつまでもやむことはなかった。新聞記者達は「新たなオペレーティングシステムの誕生」という大事件を競って打電し、世界は騒然とした。

ここにまさしく、新たなオペレーティングシステムは誕生したのである。

(この伝説は、インドの古い言い伝えである、ナーガセーナとミリンダ王の問答の一部をパクリました。)[2005]

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