=> ホーム車生活者の悲惨 > 車のコスト−日米徹底比較 

私はここ数年、毎年のように米国に行って、レンタカーであちこち走り回っている。米国に行く理由は、もちろんこの国に魅力を感じるからだが、日本でお金を使うのがばからしくなったのも理由のひとつだ。我々日本の車生活者は、米国の車生活者と比べてべらぼうな金をむしり取られているのが現実なのだ。どれだけコストが圧倒的に違うか一つずつ検証してみよう。

コスト倍率計算のためのドル円レートは、ここ2、3年の大まかな平均をとって1ドル=100円とした。その時々のレートに合わせて読みかえられたい。(この文が書かれたのは1996年 [筆者注])なお、見出しのコスト格差倍率は大体の目安である。

ガソリン代(コスト格差3倍)

私が米国で車に乗ってみて一番驚いたのは、ガソリンの安さであった。最初にシリコンバレーで入れた時は、確か1ガロン1.2ドルだった。

[解説]
ガロンは米国のガソリンの単位。1ガロンは3.78541リッターである。
1ガロン1.2ドルは、リッターに換算すると
1.2 / 3.78541 = 0.31700661
となり、リッターあたり約32セント、1ドル100円のレートで円に換算すると約32円である。
当時日本でガソリンは125円位していたから、コスト格差は4倍あった。その後、原油価格の上昇に伴って米国で値上がりすると共に日本で値下がりしたので多少縮まったとは言え、まだまだべらぼうな格差は健在だ。

今現在の格差を計算してみよう。今年(96年7月)のシリコンバレーは1ガロン1.47ドルであった。ニューヨークでは1.49ドル、地方にいくともうすこし安く、デンバーで1.2ドルだった。さて、やや幅があるので、今年のニューヨークとデンバーの間を取って1.35ドルをコスト計算の基準値としよう。リッター円に換算すると35.7円である。日本で最もガソリンが安いのは最激戦区の埼玉県で、1リッター90円〜100円である。私の住む多摩周辺では100円程度、都心は110円〜120円だ。私の実家の岡山では110円である。やはり中間をとって105円としよう。

米国で35.7円のものが、日本では105円するわけだから、約3倍の格差があることになる。2、3割の格差であれば仕方ないかとも思うが、3倍とは一体どういうことだろうか。日本でガソリンが高いのは、以下のような理由による。

オイル代(コスト格差未計算)

シリコンバレーにいる時、そろそろ日本に残して来た我が愛車のオイル交換をしなくてはならないことを思いだし、車用品の店に行ってオイルをみた。驚いたことに安いオイルはほとんどが1qtあたり79セントか、1ドル34セントであった。これはリッターと円に換算すると83.5円と141.6円である。

[解説]
qtはUS.QUARTと呼ばれるもので、1ガロンの4分の1である。リッターに直すと、0.946リッターである。

1qtあたり79セントは、1リッターあたり

79 × (1000/946) = 83.5セント
であり、1ドル100円のレートで計算すると、83.5円になる。
確かディーラーにオイル交換を頼んだ時、オイル代だけでリッター1200円とられたはずだ。一体どういうことだろうか。私が見たオイルは何か別のものだったのだろうか。

帰国後、車用品の店に行ってみたが、シリコンバレーにあったのと同じオイルは見付からなかった。オイルはものによって性能も違うだろうし、私はこれだけの事実から即、コスト格差10倍と断言することはできないが、どちらにしてもリッター100円以下のオイルを見付ける事はできなかった。

高速道路代(コスト格差∞倍)

米国の高速道路のことを「フリーウエイ(FreeWay)」という。フリーは信号がないという意味だが、文字通りただで通行できる道路でもある。今までカルフォルニア州、ネバダ州、アリゾナ州、コロラド州、テネシー州、フロリダ州と走ってみたが、サンフランシスコで橋をわたるのに3ドルとられたのとデンバー近郊の観光道路でやはり3ドルとられたのを除けば、道路で通行料を取られたことはない。

一方、日本ではべらぼうに高額の通行料を取る。こまめに料金所があり、またかという感じで吸い取られる。首都高のようにとても高速道路とは言えないものまでもがっぽり金をとっており、しかもここ十年ほどで400円から700円に引き上げられている。これはもとをただせば今ごろただになる約束だったのだ。

私のすんでいる多摩から、ちょっと成田空港まで友人を迎えに行こうとすると、横浜インターから東名高速にのって750円(普通車の場合、以下同様)、首都高で700円、東関東自動車道と新空港自動車道路で1650円、しめて3100円とられる。往復ではその倍の6200円だ。一言で6200円というが、吉野屋の牛丼を朝昼晩食って5日分、週刊ビッグコミックスピリッツの半年分(26冊)である。

岡山まで帰省しようとすると、東名高速道路、名神高速道路、中国自動車道、播磨連絡道路、山陽自動車道と乗り継いで、往復で2万8320円かかる。これだけで新譜のCDが8枚買えてしまう。その上にあの高価なガソリン代が加わるわけだから、親には申し訳ないが、相当の決意がなければ帰省もできないことになる。さらに、本州を南北に(下関から青森まで)往復すると高速料金だけで6万3800円である。同じ金額で、格安航空券を使って成田−ロサンゼルス間を往復できる。それでも利用者がいるのは、国内の鉄道や飛行機も同じく高額な料金をとっているからだ。

こんなにべらぼうな通行料金を取って、一体何に使っているのかと思ったら、これを元手にして、地方に新たな高速道路を続々と作っているとのことである。そういえば、以前岡山に帰省したときは、前も後ろも車一台見当たらないピカピカな道路を快適に走り、インターを降りて10分も走ると実家についた。便利は便利だが、大変なコストがかかっていると思うと、そこまでやる必要があるのかどうか疑問である。よく似た道路がもう一つあったはずだと思って地図を見ると、中国縦貫道と山陽自動車道という二つの高速道路が中国地方を並んで縦断している。私の田舎ではその二つの道路は50km位しか離れておらず、そんな道路が本州の三分の一の長さにわたって並んで走っているのである。

北海道に至っては、ほとんどの道路が事実上の高速道路である。そこへもってきて続々と高速道路の工事が進められているが、地元の人は今更金を払って高速道路を走る人はいないのではないかと白けているそうである。要するに、必要なところではなく、必要でないところに道路を作っているのだ。ほとんど日本道路公団と建築業者が自分達の仕事を作るためにやっているようなものだ。

ただと値段は比べられないから、通行料そのものについてはこれくらいにしておいて、通行料の有無によって、さらなるコスト格差が生まれていることを指摘しておきたい。日本ではよく料金所のところで渋滞するが、米国では料金所がないので、そのような渋滞は発生しない。渋滞による無駄な時間は別のことに割り当てることができたはずだから、れっきとしたコストである。次に、何度でも道路から降りることが出来るので、日本のように割高でまずいパーキングのレストランや、もともと割高だが、それに輪をかけて割高なガソリンスタンドが発生しない。最後に、同様の理由で道を間違えた場合の復帰コストも安い。

車検費用(コスト格差計算不能)

カルフォルニア州に住む友人に、米国では車検にどれくらい金がかかるのか聞いてみたところ、車検などないからお金はかからないという返事だった。

実際には米国の車検制度は州によって異なる。約半数の州(ニューヨーク州など)で車検がある一方、残りの半数の州(カリフォルニア州など)では車検はない。もっとも車検のある州でも、スーパーマーケットなどに施設があって、簡単に出来るようになっており、コストも10ドル程度ですむとのことだ。

一方、日本ではご存知の通り全国一律の車検制度がある。建前上は手数料の1500円ですむことになっているが、現実にはほとんどの人は業者に5〜7万円(外車は20〜30万とも言われる)かけて車検を通している。どうしてそうなるのかと言えば、一つにはいやがらせのような日本の車検体制がある。車検場に行ってみるとわかるが、事務所は一体何をしてるのか疑問に思う程の多くの事務員であふれかえっているにも関わらず、検査ラインの担当者は極端に少ない。ほとんどの検査をセルフサービスで行なうようになっているせいもあるが、そのセルフサービスシステム自体、自動車整備業界の人間を前提にしているので、参考書で勉強していかないと検査のやり方すら分からない。また平日しか検査をしていないので、サラリーマンは会社を休まなければ車検を受けられない。その上、昨年(1995年)7月まで、点検整備を行なった後でなければ車検を受けることができなかった。これは人間ドッグに入ってすべての治療をすませてからでなければ定期健康診断を受けさせないようなもので、もちろん法律にこんな条文はなく、役人が勝手な解釈をして既成事実化したものだ。役人はあの手この手で自動車検査のしきいを高くして自動車整備業界を保護し、自動車整備業界は車検セットなる商品を開発して、壊れてもない部品を交換してユーザから金をむしりとっていた。

現在でもほとんどのユーザは高い金を出してディーラーに車検と整備を頼んでいる。その現状を考えると、米国の手数料10ドルとディーラーの要求する費用5万円とを比較して、コスト格差50倍とすべきように思えるが、ディーラーの車検費用には点検整備費用が含まれているので、手数料と同列に扱うことはできない。というわけで、恐らく最も極端なコスト格差があるのは間違いないにも関わらず、車検のコスト格差については計算不能と言わざるを得ない。この手の分かりにくい話がこと車に関しては非常に多い。

反則金(コスト格差7.5倍)

代表的な反則である駐車違反の罰金は、米国カルフォルニア州では20ドル、日本では1万5000円である。1ドル100円のレートで、7.5倍のコスト差がある。

わが国の反則金は高額化の一途をたどっている。最近でも、1987年と1991年にそれぞれ平均約1.5倍に引き上げられた。今や年間の反則金収入は1000億円とも言われている。さらに警察庁は交通上の軽微な反則を犯罪とせず、かわりに反則金にさらに上乗せした額を徴収しようとしている。一見もっともな案に見えるが、要するにさらなる増収を図ろうとしているのである。これらの金は道路上の安全設備の整備に使われているというが、聞いて驚くのがその経費のべらぼうな高さだ。信号機一つが工事費を含めると一つ100万円もするのだ。それだけで新車が一台余裕で買えてしまう。交通標識ひとつでも10万円だ。一体全体あの程度のものがどうしてそんなべらぼうな値段なのだろうか。実際、過去に何度も談合が摘発されている分野であるが、それらは氷山の一角としか思えない。これでは反則金をいくら値上げしてもとうてい足りないだろう。

ちなみに信号や標識の値段は警視庁に問い合わせても教えてはくれなかった。始めに対応してくれた若い担当官は、もごもごと訳の分からないことを言っていたが、しつこく聞いていると「それを言うとぼくの首が、、、」などと口走った。その後すぐに別のゴツい声の担当官にかわり、いきなり高圧的な態度で、あんたは何者だ、業者でないなら価格は教えられないと言われた。先程の価格は、契約している自動車保険の会社に問い合わせて分かったのだ。

免許取得費用(コスト格差約10倍)

日本でも米国でも試験に合格さえすれば手数料だけで免許は取れるので、建前上の格差はさほどない。しかし、実際には運転の仕方を教えてもらい、練習しないと免許はとれない。

米国の仮免許は、筆記試験と視力検査(受験料10ドル程度)を受けて合格すれば、実技試験なしでその日のうちに発行される。仮免許がとれたら、個人指導の教習官を頼んで公道で練習する。1時間あたり20ドルから30ドルくらいで、10時間から20時間くらいあれば初心者でも十分とのことである。費用は大体200〜600ドルということになる。もっとも知合いの話によると、実際にはほとんどの人は免許を持った身内に乗ってもらうとのことだ。

日本では、自動車教習所にいくのが一般的だ。30万円以上の費用と2ヵ月以上の期間(合宿であれば期間は圧縮できる)が必要だ。教習所では仮免許と本免許をまとめて面倒を見てくれるが、仮免許は教習所で保管され、個人には渡されない。日本でコストが高くなる原因は、公認教習所がカルテルを形成しているからである。ちなみに、公認教習所は警察の典型的な天下り先の一つである。

ケーススタディ(コスト格差8〜9倍)

具体的な状況を設定して、ケーススタディをやってみよう。

米国のAさんは、サンディエゴに実家があって、サンノゼ市にすんでいる。一方、日本のBさんは、岡山県に実家があって、千葉県市川市にすんでいる。二人がそれぞれ帰省しようとした場合、必要なコストはガソリン代1400km分と高速道路代である(共に往復分)。具体的な経費の内訳とコスト格差は以下のようになる。

米国日本
ガソリン代5000円14700円
高速道路代0円29720円
合計5000円44420円

コスト格差  8.9倍

今度は、同じ人が空港まで友人を迎えにいく場合のコストを考えてみよう。サンノゼからサンフランシスコ国際空港までの距離は、市川市から新東京国際空港までの距離とほぼ同じ50kmである(片道分)。駐車場は一時間使用するものとする。結果は以下の通り。

米国日本
ガソリン代357円1050円
高速道路代0円3300円
空港の駐車場代200円460円
合計557円4810円

コスト格差  8.6倍

所用時間もコストに入れるべきかも知れない。日本では米国の2倍以上はかかると見ておかなければならない。

ぼろぼろのコスト格差

日本では車はまるで飛行機であるかのようだ。

こうしている間にも、車から金を取れることに味をしめた役人や公団や車業界が、よってたかって車生活者から金をまき上げている。車に関わるありとあらゆる分野のすべてでぼろぼろに金を取られているために、我々はいつの間にか車の高コストを当り前と思わされてしまった。

日本の車生活者はもっと怒っていい。[96/9/24]


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